ソファに仰向けに転がったまま、
殉の体、引き寄せて。

オレの上に乗せて唇合わせながら、
下着の中に、
手入れた。

一応、先に訊いといた。

「触っても大丈夫か」
「キスしながらだと…気持ちいい…」

あーそれで初回は大丈夫だったのか…
って
気が付いた。
遅いなオレ。
こいつキス好きだしってか…多分、
キスだけは違うジャンルになってんだコイツの中で。
痛い記憶と全く結びつかない世界になってて…だから大丈夫なのか…
と気が付いた。

でも下着脱がして、
自分も脱いで、

局部重ねて一緒に扱いてやっても

…やっぱりバックのほうが感じるんだろうなって
何かそんな微妙な反応…

「んんっ…ぁ、ん…はぁ…っ…」

頬、火照らせて、
腰よじって
震えながら涙ためてる。

なんだろって…最初、思ったけど。

「…イきたいけど…イけない…っ」
生殺しみてえになるって
喘いだ。

…かえって苦しいのか?
フツー逆だろって思うけど…

「にい…さん…やっぱり…ツラい…」

殉が、
涙目で喘ぎながら言った。

うっわ、エロ…。

思わずドキっとした。
お前それ犯罪的だろ。

「ぁッ、ひ、…ぁアっ…イけ…ない…イヤ、だっ…」

懸命に腰動かしながら、喘いでる。
擦り付けた先端から、それでも体液が少しずつ流れて、
くちゃくちゃいってる…
中途半端に勃起した下半身、
必死に重ねて、揺らして、自分で動かして。
先走りで、
濡れながら。

涙と唾液で濡れた…
舌が赤い…

やべえ
ぞくっとした。
何だコレ…ひとの嗜虐心、煽るみてえな、
コイツのカラダにのめり込む奴らのキモチが、なんか……
…いやダメだろ、オレ、わかっちゃ…

「あッ、ぁ、はッ…にい…さん…っ…」

やべえな…このままずっとヤってたい…
って待てオレ。

これ…
オレは十分イけるけど…
コイツは無理なんだよな…

「は、ひ、…あァッ…?!」

なんとなく引き締まった小さめの尻、両手で掴んで、後淫挟むみてえに、強く揉んでやったら、 …びくっと背が反った。

「あっ、ア、ぁ、ッ、」

太腿震わせて、オレにしがみついて、喘いでる。
コレ…イイのか?…さっきより勃ってるし…

…でも、やっぱりちょっと…

殉もちゃんとイけたら、良いんだろうけど
やっぱヤるなら挿入れねえとダメか…
じゃあ…オレがココで我慢すべき…

「…イヤだッ」
「あ?」

このままオレだけ抜いてやめようと思ったのに。
オレの肩掴んでた両腕が
首に深くまわってきて
ぎゅうっと抱きついてきた。
絶対、逃がさねえって力で…

「…このまま…したい…ッ…自分だけなんて…ずるい…酷いっ…」

あー責任取れってか。
そっか…
そうだよなァ…?…
かといってこいつの場合…乳首もNGだし…。傷で。
他もダメなとこだらけだし…
だいたい前でイけねえってどういう事だって思うが…

手でいきなり掴まれると、とにかく異常に怯える…
扱いても、気持ちよくなる前に痛がること多くて
オレにされても。
むしろ前よりひでえ、今のほうが。

もっと辛いことされてた前のほうが、平気だったって
コイツも首かしげてたけど。
こういうのって安全な場所に逃げきったと安心した後のほうが、おかしくなるっていうし
それでか?

肌は…どこ触っても…前よりだんだん痛がるみてえで…
でも…あとドコなんだコイツの性感帯…?

「…ひぁっ」

なんとなく耳たぶ甘噛みしたら、
びくんと上半身が、丸くなった。
あ…ココか。
耳の中に舌入れてみた。

「ぁっ…はぁ…んんっ」

なんか…悦さそう…。
腰動かしながら足、深く絡めてきたから、
うんといっぱい耳にキスしながら前弄ったら、

やっと

何とか殉もイけそうな感じ…
かも?…
でもやっぱり中途半端でツラそう…

いっそオレも一緒に我慢するから、
一緒に止めるか、って言おうと思ったんだけど…。

「嫌だ…最後まで…して…くれない…と…」

離さない、
ってオレの首にかじりついてる。
首、ホントに齧られた。

痛ぇ…
んん〜結構大変だな…オレも…

「ん、…はぁ…ぁ…にいさ…ん…」

何度もしてたら、
でもだんだん悦くなってきたらしくて…
自分で絡めた足、動かして。腰、激しく擦りつけてる…

「あ、あ、…ぁ…はぁ」

少し、とろんとした顔してる。
オレとバックでフツーにしてる分には…わりと、
すぐ気持ちよくなるみてえなんだが……そんな顔。

上からだけど…
会陰と後淫を、指で丁寧に弄りながら押してやった。

「ひアッ?!」

やっぱり、すごいイイ反応。
さっきから流れ落ちてる先走りでソコぬらぬらしてて、
滑りいい。
上から前後に擦ってやったら、それでもスゴク感じてる。

とっさに思いついて
傍にあったタオル掴んで、その端、指で突き挿入れて、
後淫にねじ込むみてえに突っ込んでやった。

「アッ…アァッ!?」

えぐるように擦ったら、

「ア、あ、あ、…アアッ…ぁヒッ」

カラダ、跳ねてる。あ、これイイかも…やっぱり…

「キモチイイのか?」

喘いだ顔が、こくこく頷いた。

タオル巻いた指、ピストンするみてえに
動かしてやったら、

急に、
悲鳴みてえな、声上げて。
フトモモが、びくんびくん震えて、

下腹部が、少し、痙攣したみてえになって…

「…あ……はぁ…あぁッ…」


ようやく
イけた…殉も…

少し…中途半端だったけど…。

「…っ…はぁ…はぁ…は…ぁ…最後、悦かった…けど…やっぱり……ちょっと、ツラかった…」
「ごめん。気を付ける…今度…」

デモいんじゃねえか?…アレで…?
なんか殉、最後、完全に泣いてたけど…

涙目で荒い息つきながら、
「…先…言ってくれれば…用意して、きたのに…」
「ん、ごめんな」
次、そうするから…
って言いながら、
ぎゅうっと体、密着させて。

舌と舌重ねて貪るみてえに、もう一度キスして、
タオルの指、今度は、中指と人差し指、2本で、突っ込んでみた。

「ひぃッ、…も、いいっ…」
「でも、イイんだろ?コレなら、イけるだろ?」
「そ、だけど…あッ、それ…すると…また、大変…なるから、…やだ…も…抜いて…欲し…いッ」

殉のが、少し、硬くなってる…また…

「にいさんの、は、わたしが、口でするから、…お願い、だから、やめて…」
泣きながら言うから。

ほんと、ごめん、て。
今度こそ、我慢しようと思ったけど。

ごめんの意味が、
ゴメン…
逆になった。

「あっ、あ、アっ、ア、ヤダっ…抜いてって…言った…のにっ」
「だってイイんだろ?」
「…んッ、あ、は、…ァアっ、…悦いっ…けどっ……ソレ、…ぼこぼこして、変っ」

そうか?…なんか…タオル突っ込まれて、…すっかり気持ちよくなっちまって…、前後不覚。って感じ。
さっきあんだけ扱いてやってもダメだったのに…何だよ…コレ…
だらしなく両脚開いちまって…もぅ…完全に脱力したみてえに喘いでる。

オレのと、どっちイイんだろ、
と思ったら、

急に、やっぱり、どうしても挿入れたくなった。

やべえ、どうしよう…
チョット予想外。つかタオルに嫉ましいって妬いてるとか、オレのほうがマジやべえ。
仕方ねえから、

指、いきなり4本にしてみた。

「ひぃッ?!…あ、あ、ア、…」

殉が、驚いてる。
でも重なったモノも急に硬くなって
腰、自分で上下に動かして
ぴったりくっついたオレのも、殉ので、一緒に擦られて

やべ。キモチイイ…

根本から、一緒に扱いてやった。
殉のも、オレのも。

「あ、ひっ、あァッ、…」

すげえ。
なんか
ぐちゃぐちゃで…トロトロして…
気持ちイイ…

お互いの先走りで、ぬるついて。何もかも。
殉も、一緒に、扱いてくれた。
二人の指が、ぶつかって、絡まって、
重なって、ぬらぬらして、それもなんだかキモチイイ。

あ、オレ、イきそ…

「あっ、ア、ぁ、…ッ…」

殉もイきそう…

でも…
何でだか…釈然としねぇよなァ…
今、イけるけどイきたくねえ…イかせたくもねぇ…
何だろう…このキモチ…って…しばらくイくの我慢してたら…

「やっぱ、り、…あ、あなたのが、いいッ…」

悲鳴みたいに、濡れた唇が、言った。
ホントは、あなたの、挿入れて欲しい…
って。

やっぱ、そうすりゃ良かった、最初から。
ってオレも、ものすごくそう思った。お互いに。バカみてえ。

「あ、ア、ぅ…く…ひっ…ッ」

殉が、泣きながら喘いでる。
ソファ、壊れそう…
今ならすぐ達かせようと思えばデキそうだけど…したくねえ…

こんなカンジになるなんて…
全く予想通りじゃねえなァ…コレばっかりは…
試験問題、解くみてえには全然いかねえぜ…って、
濡れた音、たてながら、
そのまま、しばらく必死に続けた。

「にいさん…も、…イきたい…にい、さんっ」
殉が何度も言うから。

仕方ねえから、

「あ、ア、ふ…ッ…ぅ…アぁッ」

思いっきりタオルの指、前後に動かしてやったら、
パンパンに張ってた前が、
弾けて
オレのも濡らして
やっと殉だけ、達った…

オレは…まだ達ってなくて…
かなりツラかったけど。
そこでやめた。
ムリヤリ。今度こそ。

そしたら、殉が、
すぐに口でしてくれた。
上がった息のまま、すぐに咥えてくれて
熱い舌が、気持ちいい…

ホントはもっとずっといっぱいやりたかったけど
マジ頑張って。
ホント我慢した。
我ながらすげえ忍耐力だぜ…
って思いながら。

でも、しばらく身体は、抱いてた。
むしろ無理やり終わらせるために
必死に抱いてたような…

後でもっかい、やりなおしてくれって
ちゃんと、あなたので達かせて欲しいって。
二人とも満足できるように最後までシて欲しいって
殉に、恨みがましい愚痴みたいにクギさされた。

オレもそうしてえ…

ほんと、ごめん。
いきなりテキトーなノリでやっちまって
あげく、こんなで。

マジ、オレもキツい…やたら途中で…。

でもオレのは、約束通り殉が口でしてくれたから…
おかげで、おもいっきり、オレのを頬張った顔に、かけちまって…

いや、それも、悪ィ…。
いやマジで。
殉、気管に入ったつって、すごく咳き込んで…
やっぱり絶対にやり直してくれって、涙目で何度も言われた。

ホント…ごめん…






お詫びに、
今度は、頼んで時間予約で、
展望台みてえな露天風呂を
貸し切りにしてもらった。

「大丈夫だって、誰も来ねえから」

って言ったら、
やっと安心してた。

まァ…たしかに…
ものすげえ傷だもんな…。

普通の人間なら目そむける…かも…
ふつうに見えるとこも酷えけど…
脱ぐともっと酷えし…。

オレは…痛々しいなと思うことはあっても
醜いとか怖いとか思ったことねえけど…。
この傷見たら…
確かに一般人は引くし…逆に…変に危ねえ奴らばっか…寄って来るのかも…?

だから、
他人に曝さねえのは…
オレも賛成だけど…。

コイツの場合…
何だろうな。
健全な明るい若者だの親子連れだのが…
キライっていうより…
怖いのかも…
と思った。

自分と酷く異質な生き物って気がして…


「髪、洗ってやるか?背中も…」
「ずいぶんサービスいいな」

簀子の上で、髪たばねて上にあげてた殉が、
苦笑した。
背中も…
斬られたみてえな痕、いっぱいある。

だから、一種の対人恐怖症みてえな…たぶん…
でも結局、殉は…
自分がってよりコレ見た他人を、驚かすのが嫌で…
SM好きの変な連中寄ってくるのは全然気にしねえくせに。
つかあっちはいいのか…一般人じゃねえから…。
ヤバい連中も大丈夫か…。
でも普通の人がダメ。

て……なんだかなァ…?……

いやでもヤバい連中は
やっぱヤバいだろ。
ダメだろそっちのが。一般人より。

「今度、メイクでもしてやるか?ファンデで隠せるだろ、ある程度…」

ナイフやカッターで何度もえぐられた、傷の残る背中、
そっと手で洗ってやりながら、
言ってみた。

「メイク?!…女性や役者がやるアレか!?…にいさん、出来るのか」
「役者て…。まァ俳優とか芸能人もな。……学祭でやらされた、高校んとき。…結構、巧いぜ?オレ…不本意だが」

絶対、嫌だって言うと思ったのに

「じゃあ今度、やってみてくれ」

乗り気だった…。

じゃあうんと可愛くしてやるか。
ホントに女の子に見えるみてえに。
それともクールなカッコイイ男のほうがいいのか?
ホストみてえになりそうだけどマジで…
髪長えからなァこいつの場合。
…でも傷ねえならオレみたいな格好でもいいのか、
どうだろう…

もっとも
完全には消せねえよなァ…この傷じゃ…。
だいたい全身に毎日ファンデーション塗っとくわけにも…
汗ですぐ落ちるだろうしって以前に毎日、一本以上、使い切るぜ…。

まァ…せいぜい顔の傷を…
もっと目立たなくするくらいは出来るだろうが…

「それでいい」
って言うから。
ちょっとやってみることにした。

……ますます可愛い妹になりそう…
大丈夫かなァ…?…
マジ男から告られたりしたら、どうすんだお前。


とぷん、

並んで広い湯に浸かった。
ホントに目の前の太平洋が、でっかい温泉みてえ。
このお湯、沈む太陽の熱で温まったんじゃねえのかって錯覚する…

殉は、
仕切のとこに両肘乗せて、
車窓に張り付いてた時みてえに、ずうっと眺めてた。

こういうの…キライじゃねえんだよな…多分。
ただ…観光客とブッキングするのが嫌なだけで…。
右から見れば、まったく顔の傷は見えねえのに…
左はさすがに…
顔面割られてモロ死にかけた経験ありますって感じだもんな…

「河井と買物行ったとき、どうしてたんだ?」
「河井くんが持ってきた帽子に、黒いベールがついてた。それかぶって、スカート履いた。家電量販店だったから」

……やっぱ女装か…。
つーかチュール付の帽子て…
河井の姉のか?!
だよな…
スカートも姉に借りたとか?
…ありそう…。

ん?!…じゃあ…殉はそれで家電量販店行って、
大学にも行く気なのか…

…ちょっと頭痛するな…。

いや大学人はそういうの、鷹揚だけど予備校なみには…。
高校までや、一般の会社なんぞと違って。
しかもあの大学は、よく教育されたエリートちゃんのガッコーなんで。リベラル派だらけ、そんなことで何か言ってくる馬鹿はいねえ。いたら逆にそいつがイジメにあう。
もっともオレがタダじゃおかねえけど。
つか逆に面白がられて名物とかになりそう…

成績優秀ならカナリはしゃいでも許される、ってとこあるしなァあそこ…
…殉は…そういう点じゃあ、大丈夫だと思う。
思うが…

やっぱり…
普通の会社に普通に就職とか…無理だろうなァ…
コイツの場合…

とは、思ったりした。

あの大学の受けるトコ自体は…性格もコアでマニアックな男所帯で。いわゆる「才能ある変な奴」がモテる世界で…女いねえしほとんど。殉に、合ってるだろう…性格的には。
それでも…
…通えんのか?…って。今考えても仕方ねえが。

ガッコーのトイレで扉全開ってわけにもいかねえのに…
狭いとこに閉じ込められて、何度も死にかけたせいで、
狭所恐怖症だし…。
借りてるマンションはガッコーのすぐそばだから、最初の1年は満員電車にゃ乗らなくて済むけど。
井の頭線と小田急線の、下北の乗り換え口の、朝の通勤帯とか日本一レベルで混むとこだ死ぬぜってくらい…。
かなり近所だけど…そんな所はもちろん行けねえし…独りでは絶対…。

そんな奴が、キャンパス移動とか、できんのか…?とか…いや日常的にも色々…

教養なら体育の授業もあるから…
他人の前で絶対に脱がねえってわけにも…
それより一番、怖えのは…

一人でいるとき、もし…倒れたら、どうしようって…

「大丈夫」

殉が言った。
「にいさんが一緒だし」
「…うん。…うん?」

でも殉、オレ、お前が入る頃、専門でキャンパス別になっちまうし…。どっちみち、ずっと付き添ってはやれねえ。
最初は…朝、送ってからオレが行けばいいが。7時にウチ出れば、間に合うし。オレたち早起きだから問題ねえ。
でもその後ずっと独りで置いとかなきゃなんねえしなァ…

なんていくら心配しても仕方ねえが、行く前から。

「にいさんは、先のこと考えすぎの心配しすぎだな。過保護ってやつだな、それ」
「…かもな」

でも真剣にお前のこと、考えるからだぜ?
しょうがねえだろ。悩んでも。

つったら

でも嬉しい。

って殉が、微笑んだ。

そっか…。
オレたち前はもっと…距離、離れてたし…。
今、こんなに近くなって、
だから心配もできるわけで…
それはオレも嬉しいけど。

ちゅって、
また殉の頬にキスした。
汗と海水混じった温泉の味…
今度は塩辛い…

「わたしにばっかり言うが…にいさんだってキス好きじゃないか」
「好きだぜ?オレはいつでも?お前相手なら」

また、
殉が赤くなった。
下向いて、
湯船に半分、潜りかけてる。
温泉の中で、茹だちそう…

でも…
いつまでも、お前とこうやっていられたら。
他なんも要らねえけどなオレ。
来年も再来年も…ずっと…

「ずっと…一緒にいられたら、いいな…」

って、殉が言った。

「うん」

今度はオレが頷いた。


陽が完全に沈んで、空の色が
だんだんオレンジから、薄い青に浮いたピンクの雲になって…
全部が濃い青に塗り変わって…
満天の星空になるまで、
そこで遊んでた。

天然のプラネタリウムみてえ。

「綺麗だな、にいさん」
「ああ」
「ここはとっても良い所だ…」
「来てよかっただろ?煙出る火山も、富士山も樹海もあるし」
「うん」

あ、
笑った。
嬉しそう、ホント。

「楽しい」

って言った。

良かった。


殉はまだまだ平気そう…オレは湯あたりしそうだったけど。頑張って一緒にいた。
いつまたこんなとこ来れるか、わかんねえし。
この一瞬、一瞬、
大事にしようって…

「大丈夫か?…あなたは、もう上がったほうがいい…」
「じゃあおめえも上がれ。オレにも少しは気ィ使えよ」
「ん、わかった」

…やっと一緒に上がれた。
あー…軽く持久力大会だったぜ…。
いや耐久力には自信あんだけど…
コイツのほうが脅威的…高温多湿には…。
体温と血圧、低いから?……何だろう…一体…

オレは危なく足元フラつきそうで…

「大丈夫か?兄さん…。やっぱり…わたしにつきあってないで…先に上がれば、良かったのに…」

松の代わりにヤシの木植えた日本庭園に、白い星砂撒いた、モダン芸術チックな脱衣所の、ライトアップされた竹のベンチの上で、
殉に、アタマ扇いでもらいながら、
しばらく膝枕してもらった…

ま、これも悪くねえなァ…なんて、思いながら。





◇to be continued◇