その瞬間、

オレたちは…本当の本当に…
過去から未来までを、想い出した。

…すべての、オレたちの過去と、その約束も…。

遥か遠くの過去までも…



その直後、…




「な?…そうだったろ」
「長かった…とてつもなく…でも…良かった…これでもう…」

「別れなくって済むな、オレたち」


今までいた交差点を、
二人で、
遠くから眺めてた。


遥か彼方の、高い場所から。



----至と高きに、栄光、神に帰し。----



そんな音韻が、
美しい朝陽が昇って空染める直前みてえな、
黎明な声で、
オレの耳にも…聞こえたような…聞こえなかったような…

ま、オレは神ナンボって思ってるけど?
なんつったら、また不敬罪でぶっ飛ばされんのか?
あ…
でもまた…殉と引き離されるのだけは勘弁な…
…それだけは

もう一回、深く深く抱き合って。
それ以上のキスをした。
しっかり手つないで。
もう全然、人目なんかも気にしなくってよくて。

「見ろよ」
「ああ、にいさん…」

「なんか…綺麗な、光が見える…」

遠くに、
白い光の向うに、

今までの現実以上に、色鮮やかな、美しい世界が見えた。

あそこに、オレたち住むんだぜ?これからずっと。

「そうか…良かった」

殉が、笑った。
今まで見たうちで、一番、美しくって綺麗な笑顔で。

あの、光の中に見える、


世界のような姿で。


「やったな」
「何をですか?」
「輪廻の輪、脱出成功だろ。踏みしだかれるの、もう飽きてたぜ」
「それは…わたしもだ…。わたしは、最初からだ…」
「だから、悪かったって。許せよ。オレも愛してるからそうなったんだって、
言ったじゃねえか」
「赦してる、最初から。じゃなきゃ、つきあってない」
「わかってる、ごめんな、殉」


あそこに見えるのは、


永遠だ


ひとが最期の最期に辿りつける、
真の世界が

永遠の世界が、
見える。

お前と一緒に…
すべてが見えた。

久遠の光の中に、

オレたちの生きた、
すべての時間と空間が。

何度も何度も
辛い輪廻を繰り返した
此岸と、彼岸と、

その先までもが…


なァ殉…これからずっと一緒だな、オレたち…

って言ったら。

はい。

ってまた殉が笑った。

わたしは最初からそれが良かったのに。あなたが強欲で我儘で無責任だから…

ってまだ言ってやがる。
相当、根に持ってんな。
だからオレもすっとぼけてやった。

そうかな。
そうです。
でも楽しかったろ?色んな人生、いっぱい生きれて。
はい。

って、なんだよ、そんなに可愛い顔していまさら返事したって何も出ねえぞ。

「短かかったけれど。どれも。…精一杯生きれて…どれも楽しかった…ただ…
短かすぎるのが嫌で…あなたと別れて生きる時間が、長すぎるのが嫌で…」
「オレもだ。だから、これからは…ずっと一緒に暮らそうぜ?あそこで」

はい。

って殉がまた笑った。

うんと綺麗な、あの光みたいに。

あそこに、



永遠が、見える。


永遠の光が、


見える…


殉、
はい、
ずっと一緒にいような。
はい。

ずっと…
はい。ずっと。にいさん、それ、わたしたちの、
ほんとうの、最初の約束でしたよ?

わたしたちが最初に出逢ったと思っていた時よりも、
もっとずっと遥か遠い…過去の時代の…

ああ。わかってる。


その時、
神は当然のように、オレたちすべてが自分のモノだと思っていて。
でもオレは、それが嫌だったから。
てめえのモンになった憶えはねえし勝手に決めんじゃねえよ。
って刃向って。

少なくとも、オレも弟も、お前のモンじゃねえから。
お互いのモンだから。

そう主張して、神に酷く怨まれた。

オレは禁を破ってお前を愛して。
お前は最初、神罰くらう結果を恐れてすごく困惑したけど、
結局、二人で愛し合って。

さらに神に怨まれて、
永遠に別れろって厳命されたけど。

でもオレは永遠にお前と居ることを神に言い張って。

そしたら、
神に、

呪いの炎を受けた。

怒りの火柱。

天上から地の底までを一直線に貫く…
巨大な劫火。

でもそれを、
全身に受けたのは、

オレを突き飛ばして前に出た…
おまえだった…。

オレをかばって…おまえは…。
だから、おまえは…
いつもいつもオレより生まれる条件悪くて…
棄てられて、存在消されて、傷だらけにされて
苦しむ人生で…。

オレよりいつも長く独りで、世界に遺されて
余計に苦しむ運命で…

それ…本当は…
オレが受けるはずだったのに…
オレの代わりに…おまえが…

そうして、やっぱり、
お前が心配した通り、
罰則の永遠ループが始まった。

長い長い永劫の罰。
運命の歯車に轢き殺され続ける…

でも、もし…
もしも、その間中、
ずっと互いを想い続けていられたなら…

赦される、

…そういう条件で…


悪かった、
やっぱりオレのせいだった。
おまえを長い間、苦しめて…
ごめんな…本当に…

でも、なァ?これでやっと…
勝ったぜ?オレたち、

神に…

って言ったら。
オレの最愛の双子の弟が、
微笑んだ。
オレを赦してくれる、優しい笑顔で…

散々でしたけど。
あなたのせいで?

けどこれで…
オレたちの最初の約束は、守られただろ?

そう、わたしも思います。
あなたの言ったとおりに、

…己の運命と存在を、神から永遠に取り戻し…
一緒に互いを得ることが…

ようやく…真実に、出来て…
真の自由を、
ふたりの力で手に入れて

…神から、

あなたを勝ち取れて…

…嬉しい…


オレも…
お前を奪り戻せて、嬉しいぜ?
ずいぶんと長いこと待たせちまったが。


よかった…

…でも……ごめんな、ほんとうに。



…けどもう…これで


オレたち…



二度と…