夢を、見た。

それも初めてじゃない。
一度見て以来、何度も見ている夢だ。

兄に唇を嬲られて、股間を弄られている。
異常だ。
ありえない。
でも気持ちいい。
あんまり悦くてそのまま達かせて欲しいと思っている自分が自分でよくわからない。

でもどうせ、夢だ。
現実には不自然でも夢ならばそうでもないだろう。
夢では往々にしてありえないことが自然に起きる。

それよりもっとして欲しい。
発情した雌みたいな声を上げ、腰をくねらせ、よがったら、イく寸前まで口腔内を貪って、扱いてくれた。
いっそ抱いてくれたらいいのに。
そう、思ってる感情が、自分の隠れた欲求なのかと感じたら、驚愕するほど意外な気がした。

目覚めてから、最低だったと、また赤くなった。

でも、どうしてこんな夢を立て続けに見るのだろう。
本当に、そうされたいと、思っているのだろうか。
自分は、あの輝かしい恒星みたいな兄に…?

叶わないと知りながら、知ってるからこそ、心の深層で熱望してるとでも?
生まれたときから、彼の影でしかない自分が、
もう一度、彼と一つに戻れれば、
すべての時間が逆戻って、自分もまた光の世界で生きられる。
そんな夢想じみた妄想を抱いているとでも?

いくら考えても、わからない。確かめる方法もない。
そんなことも、わかっているのに…

いやそれよりも。
自分には、そんな資格がない。
そんな欲求をよしんば持ったとして。
持つための権利がない。

兄弟という以前に、自分は…公然と表には出れぬ身だ。
幼い頃から世間の脚光を浴び続ける兄に、いくら憧れたとして。
同じ世界に住めるはずもない。
生まれるはずのなかった、親にとって生きてて良いわけでもなかった、穢れた醜い、なりそこないの幽鬼のような自分が、一片の曇りもない完全無欠の神のような相手に、そこまで近づけるわけもない、
近づいて良いわけがない。
自分には自分のための薄暗い場所がある。

だから、忘れるべきだ。

この感情は。

そんな気持ちが、もしあったとして…


自分は、何も欲しがってはいけない。
与えられる物で、満足しなければならない。

生まれたときから、

ずっと、

そうだったのだから…





◇to be continued◇