殉、…殉……ジュン…

どこか遠くから、自分の名を呼ぶ声がする。

呼び捨てで本名を呼ばれるのは、先代の三代総帥以外なかったことだ。
けれど、その男が死んでからも、だいぶ経つ。
いないはずだ、今はもう、誰も。

でも声がする。

必死な声。

なぜ、そんなにも懸命な絶叫のように呼ぶのだろう?
自分には、その名で呼ばれる価値がない。 意味もない。

あるのは、

親に棄てられた自分を拾った、一族の野望、
その道具としての期待、
その頭目としての役割、

そのための、呼び名だけのはずなのに。


「ジュン、ジュン!!」


ああ、やっぱり声がする。

声は多分、涙を噛んでいる。

さっきよりも、近い。
まるで現実のように聞こえてくる。
それと同時に、身体が焼けるように熱い、痛い、苦しい、全身をバラバラに裂かれる激痛に喰われそうになっている。

手を、のばした。

助かりたかったのかもしれない。

でも何から?
よくわからないまま、ただ救いを求めたかった気もする。
その、自分の名を呼ぶ声のほうへ。


「おい、殉ッ!!しっかりしろッ!!オレだ、わかるか!?」


誰かが、自分の手を取った。
掴まれる力強い感覚。
身体ごと抱かれた。

ああ、これで助かる。

理由もないのに…安堵した。






◇to be continued◇