まわりをとりまく強い光。

皮膚を焼く……轟音、爆風……。

ソードの目の前で。
魔王サタンの浮遊要塞が、徐々に崩れてゆく。

(………あ…)

チラリと、視界のスミに無傷な人間界が映る。直前に遠ざけた外魔宮殿も、どうにか無事だ。
(やったぜ……クソ天使どもが!ザマァみろ!!)

フッと、魔界と人間界をつなぐ魔法陣が、消滅した。

そこまで見届けたとたん、気が遠くなっている。
どこに飛ばされているのか、もう、わからない。
爆発と巨大な魔法陣の影響で、一瞬、時間と空間がネジ曲がった。歪んだスキ間に飛ばされて、たぶんもう、

もとの空間には戻れない。

(ま、仕方ねーか……。だって…どーせ、もう…)

痛みは、感じない。
ただ、全身が粉々にくだけてゆくのが、わかる。
白い光に、足元から飲み込まれていく。

感覚が消え、視界が消え……何も見えなくなる…。

(オレ…このまま…死ぬんだ…)

そう思ったとき。

ふわりと、誰かが背を抱いた。
「え…?…」
誰かが、背後から、
もう無いはずの体を受け止め、抱いている。

優しい息遣いが耳元に聞こえ、それが誰なのか、すぐにわかった。
「なんだァ?なんでおまえ、こんなトコに…」
言いかけて、ソードは、ハタと思いついた。
「そっか。オレ、もう死んだのか。だから、魂だけになっちまって、おまえと一緒に…って…ちょっと待て!おまえも死んだんじゃねえだろーな!?外魔宮殿は無事なハズだろ!?」

「死んではいない。二人とも」
後ろの声が言った。

「んじゃ…なんで……。いや、待てよ。それより、なんで体があるんだ?」
いつのまにか、砕けたはずの体がある。
感覚もある。
目も見える。
もっとも、さっき手に入れて失った悪魔の体ではなく、双魔の手足だ。けれど、ボロボロじゃない。
さっきの戦闘の跡が、まるでない。

「それは…錯覚のようなものだな」
また、後ろの声が言った。

「錯覚?」
「ああ。今のおまえは魂だけだ。でも、長く使っていた体の感覚を、魂が憶えていて…まるで、体があるように感じてしまう…」
「ふぅん……」
わかったような、わからないような顔で、ソードは頷いた。

「んじゃ、おまえは?何で体があんだ?てゆーか、何でここにいるんだ?」
「私の体は、魔力で造った擬似的なものだよ。いいからとりあえず、ここを出よう。私は、そのために来たんだ」
「でも、なんで……おまえ…」

「おまえが、究極奥義を使うのが、わかったからな」

耳許で、シバ・ガーランドが、微笑っている。

「フン。オレのやることは、何でもお見通しってわけかよ」
ソードは、口先だけむくれてみせた。
でも悪い気は、していない。むしろ、当然だと思っている。

いつも、魔界では、そうだったから…。

後ろから抱く、暖かい笑顔。優しい指先。柔らかい吐息。
いつも、そうだった。
いつも、厳しいくせに。

いつも…。
何も言わず、黙って、絶対にダメなときだけ助けてくれる。

そして……とても……。

「そーいや……前にも似たよーなこと、あったよなァ」
「似たようなこと?」
「……ん…」

白い光に揺られながら、ソードはぴったりくっついた後ろの胸にもたれている。
そのまま、なんとなく目を閉じた。


瞼の奥には、いつか見た……魔界の空が広がっている。






魔界の満月は、とにかく大きい。

しかも、明るい。
ひょっとすると昼間よりも、辺りがよく見えるのではないかと、思ってしまう。

空は黒いのに、
割れた大地も、短い草も、その先にそびえる高い城門も、
蒼い光にフチどられ、
くっきりそこに見えている。

ソードは久しぶりに、その、美しい紋章のついた城門をくぐった。結界の張られた巨大な扉も、
ソードが呪文をとなえれば、なんなく開く。
突然の来客に、すぐ、城の使い魔たちが出てきたが、
ソードの姿を見ると、軽く黙礼し、皆、静かに消えた。
まるで主人のように、厚い絨毯を踏み、よく知った回廊を抜ける。長い螺旋階段を最後までのぼると、以前、自分の使っていた部屋がある。今もそのままになっているそこには寄らず、ソードは黙って隣の扉を押した。
部屋は、暗い。
(あれ…?留守か…?)
豪奢な調度に囲まれた、だだっ広い暗がり。
けれど、開きっぱなしの窓からは、月の光が隈なく注いでいる。
(………お?)
静かな風に、ときおり薄いカーテンが蒼くひるがえる。どこからともなく低い弦楽器のような美しい音色が響いてくる。

窓際におかれた、高い背もたれのついたイスに、
探していた城主の影があった。

(……なんだ、居るじゃねーかよ。なんで…)
そのままズカズカと入りかけたソードは、ふと立ち止まった。
イスの影は、動かない。
仰向けに深く背を預け、フル装備の甲冑の肩に頬を傾けて、眠っている……。
長い髪もストレートに流し、いつものように編んでいない。砦の軍務から、帰ったばかりの姿らしい。
(おお!?…なんだよ…珍しいな…)
シバ・ガーランドの、こんな無防備なうたた寝は、めったに見ない。
ソードは、そっと忍び寄った。
静かに流れる音楽と風に、気配を潜め、ゆっくり近付く。
曲の振動に、魔力を隠す。
ドキドキするイタズラ心のまま、圧縮魔力をためた拳を振り上げる。……そして…

勢いよく頬を殴った!

と見えた瞬間。
手ごたえが、別のものに変わった。

「なに!?」
バキッと、ふっとんだのは、イスの背だ。

代わりに、背後で声がした。
「なんだ?昼の戦闘だけでは、まだ暴れ足りないのか?」
「チッ」
気配が近付く一瞬手前で、横に飛ぶ。相手の拳が触れる直前に、まわりこんで蹴りを入れる。
しかし、あっさりかわされ、体勢を崩したところに、背中から、おもいっきり衝撃がきた。
「ってえ……」
壁に叩きつけられ、頭をかかえてソードは呻いた。

「気配の消し方は、上手くなった。しかし、動きの読みが、まだまだだな」
目の前に立ったシバ・ガーランドが、可笑しそうに笑っている。
悔しまぎれに、ソードは頬をふくらませた。
「くっそ〜〜。なんで、オレの動きだけ読まれちまうんだよ〜?おまえの読みのほーがカンペキだってのか?」
「それもあるが…その程度の動きなら、べつに私は、見えてから動いてもじゅうぶん間に合うぞ?」
「なぁ?!」
「そうだな。できればもう少し、スピードも上げたほうがいい」
「チェッ。久しぶりに来たってのに…やっぱ全然勝てねえじゃねーかよ〜」
床にしりもちをついたまま見上げるソードに、シバはクスリと笑った。

「で?久しぶりに、何しに来たのだ。わざわざ兵舎を抜け出して、私の部屋を壊しにきたのか?」
「……フン」

ソードは口をとがらせている。それから、
艶を秘めた二つの瞳で、

上目づかいに軽く睨んだ。

「てめーは……わかってるくせに、いちいち聞くな!」



いつも魔王軍小隊の兵舎にいるソードが、フラリと訪ねてくるときの用件は、決まっている。
以前は一緒に、この城で暮らしていたこともあったから、ソードの部屋も残してあるが、あまりそこには寄りつかない。
押しかけてくると、食わせろ飲ませろ。バトルを仕掛けてくることもあるし、眠いときに寝に来ることもある。ボロボロで倒れこんでくることもある。
でも。シバの部屋に、こうして入って来るときは……



淡い闇の中。
ソードの、開いた口から小さな牙がのぞく。唇の端から流れた唾液が、月を映して蒼く光る。
のけぞったのどが薄闇に白く浮かび上がり、自身を吸われるたびに、ひくついて上下した。

「んッ…ふ……あ…ァ……シバァ…」

広いベッドの上で、ソードは立てた両膝を割られ、そこに顔を埋めた男の髪をつかんだ。
ソードを含んだ唇は、歯を立てないように舌の腹だけで強く扱いている。同時に、秘所に押し入った指先に擦られて、ビクンと下腹部が震えた。
「…ァッ…アァッ…は…ぁッ…」
ソードの濡れた唇が光り、長い髪がシーツに蒼く散らばる。
あっけなくい達かされた一度目から一転して、意地悪く、じされている。強い刺激を、身体の内と外から同時に与えられているのに、達けそうで、達けない。

「……も……やめ………ひッ…」

急に、片方の太股をぐいと押し広げられ、ソードは無意識に逃れようと腰をよじった。そのとたん、もっと強い快感に擦られ、頬をシーツに打ちつけている。
「……ああッ…は…はぁッ…」
シバの手も唇も、決して強引ではないハズなのに、絶対的な何かで逆らえない。
全身を自由にされ、ソードは錯乱した悲鳴みたいに声を上げた。

「う…あぁ……ッ」

悲鳴を、飲んだ。
秘所の奥に入ってきた硬く熱いものに、激しく擦られ目が眩む。全身がガクガク震え、あんまり感じて、気が狂いそうになる。
いくら女を抱いても、とうてい得られないギリギリの、激しい感覚。
一瞬、このまま殺されるような恐怖が走り、局部の肉がビクビク動いた。
「あぁッ…アァッ…シバァ!!」

生と死の狭間のような、過激な快感。
そのスリルにハマってしまった気もする。

蒼く淡い闇が漂う、不可思議な空間で。

何度も何度も達かされていると、少し気が遠くなった。




「やりたい時だけ、やってくる。…というのも、どうかと思うがな」
ソードの上半身を胸にのせて横たわったまま、シバが、苦情のように呟いた。
まだ、月明かりが残っている。二人の影が、もみくちゃになったシーツの隙間に淡く入り込んでいる。
すぐに、ぐったり巻きついた体が言い返した。
「てめーだって、いつもオレの身体で好きほーだいなコトやってるじゃねーかよ!!」
その背を片手で抱いたまま、シバは軽やかに笑った。
「なるほど。お互いさま、というわけか」
「フン」
まとわりつく互いの体が、暖かい。
ソードは、シバの首に手をまわし耳たぶを噛んでは、きれいな頬のラインに舌を這わせて遊んでいる。
不機嫌な声を装っているが、かなりキゲンがいい。

最近この男は、出会ったばかりの頃みたいに、自分をあまり子供扱いしない。
それが、なんとなく嬉しかった。
頬に頬をのせたまま、指先で、いつも右目を隠しているダークブラウンの長い前髪を嬲ってみる
つかんで持ちあげると、シバの両目が見えた。
「さっき、なんで寝てたんだ?」
「…………」
両目が、急にキツくなる。そのまま黙っているので、ソードは言い直した。
「いや、なんか珍しーからさ」
それでもシバが何も言わないので、ソードも口をつぐんで、目の前の瞳を見つめた。

シバ・ガーランドの瞳は、不思議な色をしている。
ひどく優しいときもあるが、恐ろしい魔力を滲ませるときもある。
優しいときは、深い蒼。攻撃魔力を使うと、深紅の光。
(けど……それだけじゃなくて……)
時々。
何を考えているのかまったくわからない、冷たく遠い気のすることがある。
そんなとき、シバの瞳には、何の色も映らない。
何も映らないのに、どんなときよりも、不思議な色に見えた。

ソードは、シバの前髪を、人さし指にからめて引っ張ってみた。
「………ん?」
切れ長の美しい蒼が、こっちを見る。それから二重まぶたがすっと閉じ、
シバは吐息のように言った。
「上級魔族の軍務会議で少しゴタゴタがあって…疲れた」
「ふーん。おまえでも、そんなことがあるんだ」
どこかほっとした顔で、ソードは、やっぱりシバの髪を弄んでいる。
「なんか、特別な戦闘でもあんの?」

「明日、艦隊を率いて最前線に出るよう、命令がおりた。作戦は、おまえの砦と合同になる」

え?という顔で、ソードの手が止まった。
「マジかよ」

ここ何年か、天界との大きな戦いはなかった。代わりに一個中隊レベルの局地戦が、毎日のように起きている。
「でも…おまえがわざわざ出るってことは……かなりデカイ戦いだよな。しかも、砦が二つ合同って……」
そこでソードは、大きな瞳をパチクリさせた。

「……てことは、おまえとソドムが、二人で指揮すんのか?」

ソドム・バースは、ソードの配属されている砦の、最高責任者だ。
一方、シバも、ソードとは別の砦の、最高責任者である。
魔界には、いくつかの中央砦と、数多くの辺境砦があるが、ソドムもシバも、ともに中央砦を統率している。
つまり二人とも、前線に出れば、数個師団を指揮する『軍指令官』の地位に就くことになる。

「ふつーさ、軍指令ごとに、別々に作戦行動とるだろ?それを合同にするとなると、一番偉いヤツが、二人になるじゃねーか。どーすんだよ?」

「作戦指揮はソドムがとる。ヤツが総司令官。私はソドムの副官だ」
「な…」

今度は本当に驚いた顔で、ソードは非難じみた大声をあげた。

「なんでおまえが、あんな野郎の…!?階級、一緒なんだろ!?実力ならおまえのほうが、ずっと……」
「ヤツの裏工作だ。ずいぶん上の者に貢いだらしい。四元魔将から直接、指令がきた」
「ケッ。相変わらず、汚ねえヤローだぜ」
「最高指令なら、自軍の賞罰は、かなり自由がきく。たぶん、あらぬ言いがかりをつけて私を降格させる気だろう。どうにも私を陥れたいらしいのだな」
シバは、ほっと息をついて、高い天井を見つめている。

ふと、ソードの声が、不機嫌に翳った。
「まさか…オレのせいじゃねぇだろうな」
「……ソード…?」
「だって、おまえはオレを……。だから、あのヤローに絡まれてんじゃ……」
これまで何度か、シバは、ソドムに暴行されたソードを助けている。暗黒魔闘術を教える前は、よく、拷問や輪姦で殺されかけているソードを、無断で地下牢から連れ出していた。
「………だとしたら……」
フクザツにむっつりした頬に、シバは、軽くキスして笑った。
「関係ないさ。気の回しすぎだ。……おまえらしくもない」
「そんなんじゃないけど…」
ソードは、少し動揺した視線を背けている。それから、思い直したように、
シバの上にのっかったまま、マジメな声で言った。

「やっぱよー殺っちまったら、いーんじゃねーの?あんな変態、生かしといてもロクな事になんねえよ」
「そんな事ができるなら、面倒がなくて、大いに結構なのだが……」
魔力だけなら、すぐにも可能な話だが、実際そんなことをすると、こっちが処罰されてしまう。
どんな理由があれ、上級魔族同士の私闘は両成敗。死罪になることもあった。
「あんな男と心中はごめんだ」
かなりイヤそうな顔で言ったシバは、しかし、すぐに苦笑している。
優しい唇が、小さくほころんだ。
「しかし、まあ、悪いことばかりではない」
「……シバ?」
「ソドムの副官を承諾する代わりに、おまえを私の武官として借りる契約をした」
「へ?」
「明日からの作戦、おまえには、私の補佐をしてもらう」
「補佐……だあ!?」
キョトンと、ソードの目がまるくなる。同時に突拍子もない声を張り上げていた。
「正気かよ、おまえ〜」
何を目論んでいるのか、シバは、くくっと笑ったまま、ソードの肩甲骨のあたりをなぞるように撫でている。
ソードは、当惑のあまり、混乱した顔になった。

「シバァ…わかってんだろーがよー……魔王軍はさ、大きい順に……」

師団、旅団、連隊、大隊、中隊、小隊……となる。

もっと具体的には、
一個小隊は、100名編成。
小隊が4つ集まると『中隊』。中隊が4つで、『大隊』。
大隊が3つで『連隊』。連隊が3つで『旅団』。
旅団が2つ集まると『師団』。師団2つ以上で、『軍』になる。

今度の戦闘は、六個師団が、出る。総勢十七万三千名ほどの大部隊だ。
………つまり。
小隊のなかの一兵卒にすぎないソードが、副指令の補佐など、論外すぎるハナシである。
むろん。
こんな対等な口をきいて胸の上に乗ってること自体が、異常といえば、異常なのだった。

「それにしても…気になるな」

天井を見ていたシバの口調が、急に変わった。また少し、瞳の色が変わっている。
「なにが?」と聞いたソードにも、答えない。

(なぜ今頃、突然、天界への侵攻命令が出たのか…)

このような大艦隊をソドムにまかせて。
サタンの側近のなかでも、四元魔将は、何かひっかかる……。
細い眉を神経質に寄せて、シバは黙り込んでいる。

「おい、てめー!!」
「ん?」
「オレと居るときに、違うコトばっか考えてんじゃねーよ!!」

なんだか、よくわからないのに。

それがなんだかムッときて、

ソードはおもいっきり、シバの胸に爪をたてた。








満月より少し欠けているとはいえ、今夜も明るい月だ。
その月光を遮って、艦隊の黒い影が、魔界の空をゴウゴウと通りすぎてゆく。

地面に落ちた無数の影は、どこまで広がっているのか、先が見えない。
軍艦は、一個小隊ごとに一隻与えられているから、少なくとも432隻以上は飛行していることになる。

魔王軍の、主力ともいえる大艦隊。
その、やや後方に。
ひときわ巨大で、イヤミなほど凝った、もっともらしい旗艦がふんぞりかえっている。

艦の最上部にある指令室は、そう広くない。しかし、周囲の壁すべてがスクリーンで、外部を見渡せるようになっており、
ここに座っていると、全艦隊の頂点に立っている実感がする。
指令室のドまん中のイスで、ソドム・バースは、さっきからニヤついていた。
これほどの大艦隊を指揮する将軍ともなれば、魔界でのハクのつきかたも違ってくる。
しかも今日は、あの気に食わないシバ・ガーランドに、公然と命令できるのだ。

同僚になって以来、あの男ほど嫌な奴はいない。
だいたい、自分の、最も気になる『階級』や『権威』に対して、シバは頭にくるほど無頓着で、全く敬意を払わない。そのくせ魔力は強くて、次々に戦功をたて、とんとん拍子に出世する。そのうえ……

(あの、クソ生意気で、ムカつくソードを……ますます増長させおって……)

ソドムは、シバ以上に、ソードが嫌いだった。たかが、小隊長にもなれない下級悪魔のくせに、信じられないほどナメた口をきく。
最初、容姿が美しいので、身体で奉仕させようとしたら、こともあろうに自分の股間を蹴り倒した。その後、縛りつけて暴れるのを無理やり犯してやったら、それでおとなしくなるどころか、ツバを吐き、やっぱり最後に股間を蹴られたあげく踏みつけられた。

(あの下級悪魔が…あぶなく不能にされるところだったわ)
思い出しても、怒りのあまり、ハラワタが煮える。
戦闘でも命令を無視するし、何ひとつ自分の言いなりにならない。
その理由が、「てめえが気にいらねえ」だ!

屈辱のあまり、見せしめに、今度は配下に命じて輪姦させたが……
(せっかくオレ様が……苦しめて嬲り殺しにしてやろうと思っていたのに……)
それを、今度はシバに邪魔された。
そのうえ、シバはソードに、暗黒魔闘術などという、とんでもない武器を与えてしまった。
ここにきて、とうとう、手を出すことさえできなくなった。

(アレは、オレ様のモノなのに!!)

部下など、全員、自分の道具だ。
殺そうが、犯そうが、自由になるべきモノだ!
それなのに……!!
あのシバ・ガーランドが、勝手に横取りしたあげく、まるで、同じ悪魔のように大事に育てているなどと……!!
めざわりすぎて、とてもこのままにはしておけない。

(だぁが……)

今日こそは、無理につかんだチャンスだ。

なぜ急に、天界に対する大規模攻撃の許可が出たのかは、知らない。でも、そんなのは、上部が勝手に決めることだ。
指令の椅子は、とにかく自分が手に入れた。

ニヤァッと薄気味悪く笑ったソドムは、

前方の巨大スクリーンに、シバを呼び出した。

■to be continued■