「ぁ…うぁ…ッ…」


体中を念入りに舐めまわされて、ぼうっとしてたら

背後から、両手で、腰を掴まれた。


「ちょ…ちょっと待て!!」

そうだった…ここで…ボンヤリしてる場合では…

「ダメ。待てねえ!」
「あ…あーッ…」

後ろから覆い被さるように、いきなり熱いものを突っ込まれて…
動転する間もない。
張り詰めたタカオのもので、中を強く擦られ、激しい動きに合わせて前まで扱かれて、
もう…何がなんだか…ぐちゃぐちゃだ。

「ア、はッ、あァッ…」
「カイ…すげぇキモチイイだろ?」

……いちいち聞かなくてもいいことばかり聞いてくる声が…オレの躯を…深く浅く抉ってくる…

「……ぁッ、はぁ…ッ…」

ギシギシいうベッドの軋みに絡まって…
打ちつけてくるタカオと…繋がった部分と…握られた中心からも…
淫らな音が滴り落ちて……酷く…犯されてる気がする…

「…あ…あぅア…ッ…」

腰を強く揺さぶられ…膝がガクガク震えて
…もう支え…きれない…
犬みたいな格好の肘が崩れ…ひきつった荒い息が…唾液と一緒に唇を伝って…頬を擦るシーツに流れてく…

カラダが…どうにか…なりそうで
まるで殺し合いでも、してるような。
でも、そのほうが、どういうわけかホッとして

なのに


突っ伏したまま目を開いたら…
ちょうど…
タカオの指で嬲られ、節操なく先走りの溢れる自分のモノが見えてしまって…
…どうしようかと…思った。

「あッ、ああッ…たっ…タカオ…ッ…もう…」
「もう…なに!?…もっと?」
「ちっ…違っ…ッ…」
「ヘヘッ…おまえ…そんな…自分で腰振っちゃって…達きてえの?」
「じ…自分で…って…きさまが…ッ…」

ひとの躯を…さんざん啼かせといて…このバカは……

……やっぱり…

なんだか…楽しそうだ…。

「なー!やーっぱ毎日ってのがいーんだよ!!すっげ〜慣れるし〜リハビリと一緒だぜ!」
「なにを…きさま、自分だけ都合のいいことを…!!」

まったく…コイツというヤツは…退院して自宅に戻ったとたん、
さっそくベッドに乗ったまま、
『オレ…三ヶ月半もガマンしたんだぜ!?もうとっくに限界、超えてるんだよー!!』
マジメなカオで詰め寄られ…それから、もう何回も何回も……

「だって、おまえ〜たまにやると、すげぇ痛がるじゃねえか〜。せっかく慣れても二週間もあけたら、また元に戻っちまうだろー?!だからァこういうのってリハビリと一緒で、毎日やんねえとダメなんだよ!」
「だからっ…それが、都合がいいというんだっ!!」
「え〜だってオレ、おまえが痛がると、すげーやりにくいし〜。おまえだって、気持ちヨくなきゃヤるイミねえだろぉ?」
とかなんとか…まるめこまれて……毎日いじられてるうちに、本当に…

あっという間に…慣れてしまった……。

いいのか……こんなことで………とは…思うんだが…

「はぁッ、…ぁッ…ッ…」
「エッヘヘ〜…そんな…イイ?…良かったぁオレ…」
「だっ……誰も…好いなんてっ…言って…ないッ…」
「えーウソ。だって、すげーもん、おまえの、ココ、反応が」
「…うぁッ…」
絞るみたいに…中心をギュッと握られて…
「も〜こんな蜜みたいの、いっぱい出して…」
強く扱き上げられて…気を失うのかと…思った…
「は…ひぁッ…」
「もォ悦くって好くって〜って感じだぜー?それにっほら、イきそうになるたび、中もっ締めつけて、くるっ」
「きっさまァ…さっきから…ゴチャゴチャと、うるさ…!?」

「でも、やっぱ顔が見えるから!こっちのがいいなーオレ。なんか、後ろからしてると強姦してるみてぇでヤダし!」

「あッ…あ……ひッ」

突然、繋がったまま体を回されて
もっと激しい快楽に…串刺しにされてる…

「あ…あっ……」
「キスもできるし」
「んんッ……ンぁッ」

腹まで勃ち上がった自分のものが…互いの体の間で擦られて、
中ではタカオが動いてるし…おまけに口までふさがれて…
いったい…もう…なにが、どうなってるのか…

それでも
失神しそうな強い快感に貫かれながら…
なんとなく…
こういうのを絶頂っていうんだろうな…と…アタマの隅で思ってる…

瞳を開けたら…

薄ぼんやりした夕靄の向こうに

庭の奥で残って揺れてる…一輪だけの…桜が見えた。



「木ノ宮…」
「ん〜?」

足の間に、自分の足を絡ませて…オレの上にのったまま、タカオが…
…ひとの耳朶くわえて…しきりに引っ張ってる。

…いい加減にしろ。どっかの仏像みたいに耳が伸びたら、どうしてくれる。いや、それは…ともかく…
「きさま…終ったのなら……さっさと抜いたらどうだ…」
「ヤぁだね。まだ終ってねえもん」
「こらッ…!」
オレの耳に舌なんか突っ込んでっ…なにダダこねてるんだ…
そもそも…もう2回…いや3回目じゃなかったか…?……黄昏時あたりから延々と…
「え〜っそうだっけ?」
「………」
「けど…今のは、どっちかってーとカイが放してくんねえって感じなんだよな〜。ほら、オレがいくら引っ張っても、ぜんぜん抜けてこねえってゆうか〜」
「……きさま」
「わーウソウソ!すいませんっウソでしたっオレがヤりてえのっ!!だって明日、大地と、じっちゃんが帰ってくんだろー?そしたら、どうなるかわかんねえじゃねえか」
「なに…?」
「ってコトで。カイ、今夜は覚悟しとけよ?」
「覚悟って…ちょっと待て」
焦って引き剥がそうとするオレを押さえつけ、タカオが…あいかわらず楽しそうに笑いだした…。

「そーだ、やっぱ海も行かねえ?今年は、一緒に泳ごうぜ!」
「泳ぐ?」

オレが?真夏の太陽の下?観光地の白い砂浜なんかで海水浴?

……自分でも想像がつかん。

「カイも水着きて、一緒に海はいろーぜ?それともプール行く?」
「……オレが、行くと思うか?」
「も〜、おまえってば、いっつもそれだもんなァ。なんでだよ〜」
今度は妙に落胆した瞳が…オレの頬にくっついてくる。思ったより長いまつげが…くすぐったい。
「オレと一緒に行くの、嫌かー?」
「そうは言ってない」
「じゃあ、なんで?」
「その類のアウトドア活動には、興味ない」
「だから、なんでだよ?」
「……ないものは、ない」
「だから、なんで?」
「……」

なんでなんでって…今夜に限って、しつこい奴だな。
だが、そう追及されると…
なんとなく自分でも…どうしてかと思った。オレは…たしかに団らん系レクリエーションには興味ないんだ。だが…それだけだろうか…

そこに近付こうとすると…なにか漠然とした…思い出したくもない過去に似た…影みたいな不安を…感じる。

コイツに、あんまり抱かれても…そうだった。
だから、いまだに……一緒に住むとも…頷けない…

…………?


「木ノ宮……いいから、もう…どけ」
「も〜なんでだよ〜?疲れたか?それとも…どっか具合悪い?」
「そういう…わけじゃ…ないが…」

「じゃあいいだろぉ?離さねえからな!今夜は…」
「おまえ…」
「今日はオレ、おまえといっぱいやるーって決めてんだよ」
「か…勝手に決めるなっ」

「でも、もう決めちまったもん」

一瞬…オレの動揺を抑えるみたいに、淡いオレンジ色で凝視つめてきた瞳が、
「なーいいだろー?」
一転、甘ったれた声音と一緒に、スリ寄ってきた。

「おい!?…きさま!!………ッ…」
いきなり抱き締められて…繋がったところから…ビクンと響いて…ひきつれてる。
「あ…ぅ…」
揉み合ってるうちに、中に挿入れられた体液ごとタカオが動いて…
…また…下半身が…おかしくなった…
「う…ん…」
「どお?したくなった?」
もう…じたばたも出来ず…ただ、されるに任せてるオレを抱いて…コイツは…
イタズラの成功したガキみたいに喜んでいる…。

「…ふ…ッ…」
タカオの指が…すっかり屹立したオレの胸の突起を…押し潰すみたいに転がしてくる。首筋を…唇で甘咬みされながら舌で嬲られて…だんだん上がる息が…また…熱い。

「…ッ…木ノ宮…おま…え……」

まさか本当に…一晩中、やり続ける気じゃないだろうな…
いったい…オレをどうする気なんだ…?

なんだか奇妙な不安にかられてきたオレに…
すこし鼻にかかった無邪気な声が…呑気に笑いかけた。
「えっと〜あのなー……オレ、いっぺん、おまえが水着きて泳いでるの見てえんだよな〜!」
「なに?」
「だから泳ぎに行こーぜ?」
「……きさま…また何か…ロクでもないこと考えてるのか…」
「え〜!?ンなことねえよ。色んなカイが見てぇだけ!えーと〜だから一緒に浴衣着て、お祭りも行こうぜ?」
「……祭りなんかに行って、なにするんだ」
「お祭りつったらオマエ、キンギョすくったり、リンゴ飴食べたりすんだよ〜。決まってんじゃねえか」
「………」
「それから花火も見て!そんで…冬んなったら〜もっと寒いトコも行ってみよーぜ?オレ、おまえと一緒に、ホンモノの雪がいーっぱい降って積もるとこ見てえんだよなー」

……たしかに、この近所じゃ…そんなものは見れないが…なんだってコイツ…

「で?オレに…雪合戦の相手でもさせる気か?」
「それもいいけど〜。そだなー…おまえとオーバーのポケットん中で手ェつないで雪んなか歩いたり!夜の雪祭りとか見てえなっエっへへッ〜」

色とりどりにライトアップされた精緻な雪像は…たしかに綺麗かもしれない…が…ポケットで…って…オマエ…
ああ……そうか。なんだ。やっと、わかった。
どうもコイツは…一般的な恋人同士がやるようなコトを、したいらしい。

「だったら…遊園地の観覧車や、アクアリウムの海月でもいいんじゃないのか」
「クラゲ〜!?」
あれも…暗がりにライトアップされた空間で、ほんとに…海に沈んだ月みたいに幻想的に光るから、とても…綺麗だ…。
と、言いかけて…
自分でも、なにを言い出すのかと…思った。
うっかりコイツのペースにハメられて…バカなことを……


「うわァ〜それいいなー。よし行こうぜ!!んじゃ、来週な。土曜が水族館で、日曜が遊園地〜!!」
すっかり、わくわくした顔で、タカオが喜んでいる。

……その…影のない明るい笑顔を見ていたら…オレまで、胸に灯りが点ったみたいに嬉しくなってきて…。
そしたら、やっぱり…その喜びを裏返したように不安になって。

慌てて、

「おい待て。まだ行くとは言ってない」
「え〜っ?!いまさら棄権ナシだろ。もーオレ、行くって決めちまったぜ」
「だから勝手に決めるな!」

訂正したのは…なぜかと…思った。

なんだろう。この感情は…まるで、記憶の底から滲んでくる黒いシミのような…
焦り、とも少し違う…いや…同じだろうか?

……充足するほど、オレを漠然と取り巻いてくる…影みたいな淡い不安…
こんなモノがあるから…オレは、どこにも行けなくて、未来まで疑う。そういう類の…


「ん〜じゃあ〜どうしよっかな〜」
「うッ…あ…」
急に…ずるりとコイツが出ていくのを感じて。
内股を伝った生温かいものが…どっと流れ落ちた…。
「あ…あ…」
敏感になったソコに指を突っ込まれ、思わずシーツをつかんだら
「ん〜…どうして欲しい?カイ?」
タカオが…ひとの下半身を広げて、両足の間に居座ったまま…首をかしげてる…。すっかりコイツに秘所を晒した格好で…オレは…今から、なにをされるんだ?!…というかコイツは何を悩んでるんだ!??
「きっ…木ノ宮…きさま……もう寝ろ!!」
「……ってオマエ〜まだ8時前だぜー?」
「ひっ…ぁ…ッ…」

なに…するんだ…きさま…

…指と一緒に…ソコに…舌を挿入れられて…
つま先まで、感電したみたいに…引きつってる。柔らかい肉が、内壁をこじ開け圧し挿入ってきて
オレの…中を…襞の奥まで…舌が…

「…うァ…ぁッ…」

唇に…秘所の入口を強く吸われて

思わず、両足を閉じようとしたら、
タカオの手に、太股をつかまれて。もっと…広げられた…。
「…ひッ…はッ…」
下半身が…ひくついて…変に…な…る

「ア…ぁッ…」
両足を高く抱えられ…目の前にきた自分のものが…また…ゆるゆる勃ちあがって……なんでこうなのかと歯噛みしたら…
「ほら〜おまえだって、すーぐ、こんなんなっちゃって〜」
カッと熱くなって…赤面してしまった…
「やーっぱ、したかったんじゃねえかよ〜!ったく、なんで、そうスナオじゃねえんだよなァ」
「きっ…きさまのせいだろうがッ…ふざける…なッ……」
「ふざけてねえよ〜。もーおまえって、どーしてそう、あれダメこれダメって…キモチイイコトばっか拒否すんだよ?もしかして痛ェの好き?…なワケねえと思うケドな〜」

「…ア……ぁ…あぅ…」
会陰のあたりを指で刺激されながら、奥まで舌を突っ込んでは抜き挿しされて…

快楽に鷲掴みにされたみたいに…カラダの自由が…きかない…

「あッ…アァ…」
タカオが動くたび…
勃ちあがったものが……また…快感にズキズキ鋭く脈打って
「は…、ふっ…」
ぬかるんだ音をたてた内側が…勝手にコイツのものを…欲しがった…

「…は……ぁッ…」
「どう?挿れて欲しくなった?」
「……ふ…ッ…」

「なぁカイぃ」
「……いつまでっオレで遊ぶ気だっいいから、もう寝ろッ…」

「カイで遊ぶって〜人聞きの悪ィコト言うなよ。もぉ〜おまえ気付いてねえのかよ?自分で足開いてるくせに〜」
「だっ…誰が…」
「たまには、おまえも可愛く‘キノミヤ、して’とか‘ソコもっとォ’とかァ‘タカオ、今のイイッ’とか言ってくれねえのかよー!」
「ばっ…バカか!!なんで、オレが…」
「え〜?だって、こういうのって、お互いの盛り上がりが大事ってゆうかー。もーぜんぜん、すげーキモチヨクって楽しーのが、いーじゃねえか」
「…ッ……ひァ…ッ…」
「なー?カイ〜?」

なにをコイツは…さっきから…ゴネてるんだ…!!
いや、それどころじゃないっ…いったい…いつまで……

耐えきれなくなって…首を左右に振って下半身をよじったら…

「わァ…おまえ、そのイヤイヤしてるみたいの…すっげー艶っぽい…」

また…阿呆の嬉々とした声が…

「腰動かしたりして、ノドとか肩とか白ェし…なんか…どうしよーオレ!」

どうもせんでいいというのに………もうなんとかしてくれ…
なんでコイツは…こんなで…
ふわふわと…ほがらかで…いつも絶好調なんだ…。
しかも…
何の他意もない、単純に爽やかな顔をして…
「ヘヘッ。イきてえ?でも、どうしよっかなー」
「……ぁ…ッ…」
さっきから…射精を促すみたいにオレの先端を押し広げていた指が、急に止まって…
そこをきつくおさえたまま、基部から強く扱いてきた…
「あっ、あ…よせ…」
「へっへー。こんくれぇガマンしろよ」
「勝手なこと抜かすなッ」
「おまえが可愛く頼んでくれねーから!イヤガラセしちまおっかなー」
「きっさま…変な理屈をこねるなッオレを弄ぶつもりか!?」
「だははっそれもいーなー!火渡カイを弄べるなんてオレってサイコーにシアワセ者?」

「あ、あ、…やめろ…ッ…」

下腹部の筋肉が痙攣して……射精感が…突き上げてる…
絶頂感に、脳の芯まで戦慄いて…内股が震えて…奔流が出口まできて暴れてるのに…無理に逆戻されて…
達きそうなのに…達けない…
「ひッ…あぁッ…」
達く寸前のまま止められて身悶えしてるオレに…タカオの指が、ますます追いうちをかけてくる…。
舌が…オレの中に…挿入れられて…嬲られて…
「や…やめ…」
起き上がって殴り飛ばそうにも…全然…力が…入らな…

「……アッ…ああぁッ…」

快楽が…苦しすぎて…全身が…
引きずられ…引きまわされ…

狂いそうだ…

「たっ…タカ…オッ…もう…ッ…」

躯が上下に激しく波打って…どうにか…なりかけてる…

「…ア…ア、アァッ…」

達かせて欲しいのに…オルガスムスのまま止められて

快感が…激しすぎて

なのに…
…途中で止めて、また最初から…

「や…やめ…」

「ん〜もう少し、このままで」
「きさま〜ッいい加減にしろッ!!」
性格は違うくせに…こっちは、しつこすぎるんじゃないのか!?
「ん〜もぅちょっと!」

「あっ、あっ…た…頼む…も…やめて…くれ…」

…あんまり苦しくて…仰け反ったまま悲鳴を上げたら

「うわっ…ゴメンっ」
やっと…手が…離れた…。
「カイ…もしかして…泣いちまった…?」
「は…ぁ…っ……」
塞き止められてたせいで、すぐには出れない体液が…わずかずつ流れてる…
「……ッ…ふ…」
「な、いま、するから…」
それでも、指がまた搦んで…ゆっくり促してきたから

ようやく最後まで…達けて

「っう…ぁあ…ッ…」

…熱が…弾けて
胸まで…濡れて……息が…

「きっさま〜」
「わー!待ったっ」
急いで重なってきた唇が
オレの罵声ごと吸い取って。機嫌をとる甘い舌先が…
目尻をすくって雫を…舐めた。
「カイ……怒っちまった?」
「あやまるくらいなら、最初からするな!!」
「だって〜おまえがオレにイジワルするからだぜ〜?」
「どっちがだっ!!」
「じゃあ、遊園地と水族館……行く?」
「………」

……………脱力のあまり…言い返す気力まで…失せそうだ…

「それにオレ…おまえの、そのカオ、好きだしー」
「ばっ……」
絶句してるオレの前で、タカオは…
こっちが怒る気も失くすほどシオらしい様子で、ボソボソ言った。
「だって、おまえって、いつも無表情で、わかりにくいじゃねえか。けど…」
「それが、なんだというんだ!」
「こういう時だけ、見たまんまってゆうか」
「………」
「口じゃヤダヤダ言うけど、カラダは、してして、だろ〜?そういうのが全部、カオにまで出るってゆうか」

「………」

……なんだか…思考…ぜんぶが固まってきて…よく…ものが…考えられなくなりそうだ…
しっかりタカオに絡んだ全身は……
鏡で見たら…きっと酔ったみたいに真っ赤になってるに違いない…

「きさまというヤツは…どうして、そう…」

「だからオレ、カイとするの大好きだし。もっともっと、したいし。一緒に、どこでも行きてえよ。オレ、カイと、もっと一緒にいたいよ。もっと近くで触れたいし、もっと奥まで入りたいし…けど、おまえがダメだって言うから…」

「………」
どう、応えたらいいのかと、思った。オレだって…そうには違いないのに…
…オレは…

「なぁ、また挿れていい?」



「……あ…うぁ…」

ぶつかった先が、異様に熱く感じる。
そのまま…だんだん質量感のある硬いものが挿入ってきて…背筋が痺れて…躯の奥も…
なのに途中で引っ掛かったそれが…
強く押し切って貫くまえに、意地悪く止まった。

「カイぃ…なぁ…」
「き…さま……また…」

なんてことをしてくれるんだ…さっきから…コイツは…
焦らすのも、いい加減に…

「オレのこと、必要?」
「……」
「なー、たまにはコトバで言ってくれよー」

バカみたいに…
少しだけ泣きそうな、淡い瞳で微笑うから。

コバルトブルーの前髪をかき上げ、額を、ゴンッと殴ってやった。
なに言ってるんだ。バカのくせに。

「いいからっ…はや…く…来いッ」
「……んーま、いっか!」
「……ッ…ア…ふ…」

やっと…木ノ宮が奥まで挿入ってきて…待っていた刺激を与えられて…
言い訳もできないくらい…気持ちよくって……

…結局オレだって…そうなんだろうと思った。

「あッ、はぁッ、アァッ…」
全身を捕らえられ乱暴に揺さぶられて…ひどく感じて
…それでもまだ…カラダが…欲しがってる…。

もっと、もっと…
いったいどれだけあれば足りるんだろう。
求めるものは…

…永遠に繋がっていたいとでも…いう気だろうか?

移らない刻など無いというのに。このまま、いっそ刻が止まってしまえばいいと…
本気でオレは…思っているのか?


「アッ、アアアアァ、……ッ…」

断末魔みたいな嬌声をあげた瞬間、
強い迸りを感じて…内にも外にも…白濁した体液まみれのまま倒れ込むように、重なって。
それでもまだ、抱き合ったまま…相手を掴んで離さない。

オレの……もう…心ばかりか…腕までが…

「木ノ…宮…きのみ…や…」
「カイ?…カイッ…!!」

オレは、どうすればいいだろう?
こんなに満たされてしまったのに。それを失くしたら、きっと前以上に不幸になる…。

それを止めるために、いったい、どんな無理をすればいいのかと…

それが、わからないから…きっとオレは…

「カイ…?」

それでも
もっと強く、背中に回った腕に抱き絞められたら。

やっと少し…安堵した。

「カイ…どうしたんだよ?」
「………」
「おまえ…やっぱり…ちょっと変だぜ?…なに心配してんだよ、カイ?」
「……」
「オレ…この手は何があっても絶対ぇ離さねえって…約束したのに?」

それを信じてないわけじゃないのに。

どうしても重なってくる、ほの暗い影は、なんだろう?

オレは…
今まで…ずっと、そうだったから。
うまく、感情を表に出せないし。

いつも辛いほうへ辛いほうへと自分を追い込んでいないと…安心できない。

なにか、もっともっと苦しい努力をしなきゃいけない気がする。
この…手に入れたものを守るためにも…もっと…なにか…?

オレが…こんなに平穏に溺れてて、いいハズないんだ。


「だいじょうぶだよ、カイ」

まるで呪文みたいな声と、両手が…オレの身体を包んできた。

「なぁ…カイ。オレ、今がとってもシアワセだから。これ以上は…ホントは…何も望んでねえんだぜ?」
「木ノ宮?」
「おまえを、絶対ぇ離さねえってコトだけだよ。オレが誓ってるのは」
いったい、なんの…告白かと思った。

「…ぁ…」

タカオの指が、オレの唇を開かせて…舌に搦みつかせて嬲ってくる。まだ冷めない躯を煽られ…タカオが挿入ったまま、ゆっくり腰を動かされて
「…ん、ん…」
甘ったるい愛撫と声が、直接カラダに入ってきて…酩酊みたいに昂った…。

「オレ…最初は、ホント何も考えてなくて。おまえのこと、好きだってことしか頭になくて。でも、だんだん、おまえの気持ちとか色々、気にしちまったら…どうしたらいいのか、わかんなくなっちまって…。おまえに、もっと触りてえんだけど…嫌がられるかなーとか。どこまで入っていいんだろーとか」
「……ん…」
「ネオボーグにだって、BEGAにだって……すぐに連れ戻しに行きたかったけど。ムリヤリそんなことしたって、おまえは帰ってこねえだろうし。前みてえに今スグおまえがやべえってワケでもなかったから…色々わかんなくて…すごく困った」
「………」

「…ほんとに、すげえいっぱい困ったよ」

「……ぁ…」

唾液が…飲みこみきれずに、とめどなく零れて。そこから引き出された、濡れた指先が、白い光を灯して。
光を映したタカオの瞳が…綺麗な色で微笑みかけた。

「BEGAにだって、オレ、何回も行ったんだぜ?テレビで予選見てから、居ても立ってもいられなくて…迎えに行ったのに…もう、ここにはいねえって言われて…一生懸命、探したけど、どこにもいなくて…おまえの居場所もわかんなくて…」
「……」
「あんな体のまま、どっか行っちまったって聞いて…不安で心配で泣きてえくらいだったけど…集まってくれた皆の手前そんなことも出来なくて。その間も試合は近付いてくるし、練習はしなきゃなんねえし…
……あの一週間が、地獄みてえに辛くて長かった…。ただもう、おまえが無事に帰ってきてくれるのだけを祈って…でもなかなか来てくれねえから…どうしちまったのか心配で…。
試合なんかほったらかして、おまえが見つかるまで探し続けたかったのに…それさえ出来ねえで…もうあんまり心配で…気が狂いそうだった…」

そう言って、ほんとうに、悲しそうな瞳で微笑むから、

「だからオレ…おまえが帰ってきてくれて、すごく嬉しいから。こんなに近くにいられてシアワセだから。それ以上は…ホントは何も望んじゃいないんだぜ?」

晴れた笑顔に変わったとき、まるで心の底まで映したようで
…そこに、見たこともないほど、強い光が重なっていた。

「カイ、おまえの気持ちを…いっぱい考えるようになってから、オレは…おまえの邪魔は出来ねえし、したくねえって思ってた。でも…最近、思うんだ」

大きな瞳と一緒に、両腕が、きつく抱き締めてきて

「オレは…おまえを絶対、離したくねえし…離しちゃいけねえんだろうって」

…強く強く、苦しいくらいに捕まえてきて

「……おまえは…放っとくと…どこ行っちまうか、わかんねぇから。しっかり、つかまえとかなきゃなんねえって」

ぴったり合わせて口を吸うから。
オレの…得体の知れない影までも吸い取られて、半分くらいは減りそうだった。

「カイ。おまえが、どうなっても。どこ行っちまっても。オレは…必ず、連れ戻しに行くから。…そう、決めたから。じゃねえと、おまえを守れねえって…オレ、思ったんだよ…」

だから、おまえより…オレたちがずっと一緒にいられるように…オレがもっともっと努力する…


ささやいた声と一緒に、耳の裏を舐められて。
また…硬くなったタカオのもので…オレ自身も…擦られて。
脚を開いたら…タカオと一緒に…指が…挿入ってきた。
「…ぁ…く…」
指一本分だけ余計に感じて…襞の奥まで淫らに嬲られて…
「ぁ…あ、あ、っ…」
強く感じるとこだけ刺激されて…
「アぁッ、ァッ、…ッ…」
その…ぜんぶが気持ち悦くて…満たされてるから
突き上げられるたび、もっと締め付けて。コイツが出ていかないように…
「カイ、キモチイイ?」
ちょっとだけ頷いてみた。
「んっ、オレも!」
「は…ッ…アァッ…」

いったい、何回目なんだ…。もう…絞れるほど濡れてるシーツを、
もっと濡らして…オレも…コイツも…。

なんだか…バカみたいに…


いや、やっぱりバカなんだろうと…思った。
コイツに抱かれてるうちに、オレ自身が、一枚、一枚、脱がされてって

もう、どんな痴態も、晒してしまうほど。


みんな…コイツに…やってしまったんだろうか。

「あっ、あっ、あぁッ…」
「カ…イッ…」


かもしれない。
だから

最後の一枚まで脱がされたとき
オレの封印していた記憶までもが足元に落ちてきた。

…たぶん…

「アァッ…」
「カ、イッ、…」

そういうことなんだ…


オレの…影っていうのは…








くたくたになってベッドにつっぷしてたら。
背中を、タカオの指に、なぞられた。

まさか…また…する気じゃないだろうな…。とギクリとしてたら…

「ココらへんなんだよな〜。羽根、生えてんの」

オレの肩甲骨の上に、頬をつけて、独り言みたいに呟いてる。

「けど…最近、ちっとも出てこねえなァ」
「…………なにが」
「羽根の生えたカイがさ、ぜんぜん、出てこねえんだよ。このごろ…」

つまんねえよ。
とタカオがブツブツ言うので。

なんだ、そんな話か。と思った。

「それは…そうだろう」
「うそ…おまえ、わかんのかよ?」
声が、背中で起き上がった。
「じゃあ、なんで?オレ、会いてえんだけど。呼んでくれよカイ〜」
「……無理だ」
「なんでだよ〜。おまえの分身みてえなモンなんだろ?オレさ、そうだな〜子供のカイに会いてえなー。色違いのカイでもいいよ。なぁなぁ〜」
「出るわけない」
「え〜なんで?」
「バカか。きさま…」
「バカじゃねえだろぉ。オレには大事なコトなんだぜ〜?!」

やはりバカだな、おまえは。
こんなに……毎晩こんなことしてて…出るわけないだろうが!

タメ息ついたオレの背中で、タカオもタメ息をついている。

しばらくして、
タカオが…
少し、ぼんやりした声で言った。

「最後に見たの、…透明な羽根がついてた。ダイヤみてえにキラキラしてて…すっげえ…見たこともねえほど綺麗で…。なんか…見たこともねえほど…幸せそうに…笑ってた…。光みてえな羽根ひろげて……もう来ないかもしれないって…。あれで…良かったのかな…」

「そいつ、そんなに喜んでたか?」
「ああ」

「だったら……それで、いいんだろ…」

オレの…たぶん……一番、望んでたものが手に入ったから……
そいつは…きっと、もう彷徨わなくても済むほど…幸せになったんだ。

本当に…シアワセになったんだ…。オレは…

コイツと際限なく抱き合って…
オレは…なにがどれだけ不安でも…それさえ無い時代より、きっと幸せなんだろうと思った…。

やっと…帰れる場所を見つけたんだ…

だからその代償に…

とっくに葬ったはずの、古い記憶の残骸を…思い出した…。

…それだけの…ことだ…。



「あれ…?!」
「…?」
「おまえ…さっきより腕上がってんじゃん!?」
急にタカオが…オレをひっくり返して、腕を持ち上げた。

さっきよりって……おまえ…
それは物理的にあり得ないだろ。

「…つまらん嘘を言うな」
「いや、絶対ぇ上がってるって!!」

………とかなんとか言いながら…
オレのワキの下や、腕の内側を…しきりに舌で辿ってるオマエという奴は…
オレを、キャンデーかなんかと間違えてるんじゃないだろうな?

「とりあえず、も少し動けるようになったら…また、バトルしようぜ?」
ひとの指を一本ずつ口に含んで舐めながら、
そんなことを言ってくるから。
「ん?…ああ?」
なんとなく、あいまいな声を出したら、
「なんだよ〜その気のねえ返事は〜」
すぐに不満気な瞳が返ってきた。それから、しばらく…オレの小指をくわえて見ていたが、

「あ〜もしかして、おまえ…」
ニヤニヤ笑った唇で、
爪と肉の間を舌先で突っつきながら、こんなことを言いだした。

「全開でドランザー操れなきゃヤダとか思ってる?」
「……」
「どおだよ?図星か?」

ちょっと…ドキリとした。

「けどよー派手ワザ出すだけがバトルじゃねえだろ?要は気持ちだよ、キモチ!!」

コイツは…完全体感主義の、体力バカのくせに…。
ときどき真髄突くから…侮れない…。

「体調万全だって強ぇとは限らねえし。ダメな時ゃダメだし。いいじゃねえか。シュート撃てるようになったら、また公園か河原行って闘ろうぜ?」

「………ああ」

「ンだよ〜ノリ気じゃねえな〜」

また少し黙っていた声が

「おまえ…もしかして…」

急に、意地の悪い含みになった。
と思ったら、次の瞬間

「朱雀に見捨てられたんじゃねえかって…心配してたりして…」

今度こそ、ギョッとした。

「ば…バカな!オレがいつそんなことを…」

ソッコー切り返すあたりが、ますます怪し〜などと…コイツに勘ぐられて…。

…黙ってしまった。

なにを生意気に…オレの図星なんか突いてるんだ。
木ノ宮のくせに…

BBAに復帰なんて、とても無理じゃないのか、というのは…

そういうことだった。

オレは…以前のように、身体の自由がきかないばかりか…
敵であるべきコイツと馴れあって…シアワセになりすぎて…
すっかり相手を倒す意志とか、闘争心とか、追い詰められたギリギリの憎悪や野心までも…失ってしまった気がする。
結局、オレには…ベイを回したい相手なんて木ノ宮しかいなくて。戦いたいのも、倒したいのも、コイツしかいなかったのに。
その木ノ宮にこんなに満たされてしまったら…ついでに敵愾心まで消えてしまったらしい。

そんな腑抜けたオレを…朱雀が見限ったところで、おかしくはない。
いや、むしろ、当然だ。

「心配ねえよ」
木ノ宮は…しかし、そんなことにはおかまいなしに、あっさり続けた。
「だって、アイツ…おまえのコト好きだもん」
「好き…だ?」
あれは…戦うエネルギーの、カタマリだ。そんな人間じみた感情があるだろうか。
「あるある。だってオレ、青龍と、話できるし」
きさまの天然ぶりと一緒にされてもな…とは思うが。……だとしても…翔べないオレに、つき合うだろうか?

「カイ、おまえ…まさか、それで悩んでんのかよ?」
「………べつに…そんなことはない」
「ふーん?そぉかぁ?」
タカオが…ジロジロと、オレを眺めまわした。
「今夜はそーゆーの聞き出してやろうと思って。いっぱい、してみよーっと思った〜てのも、あんだよな〜」
「な?」
「だって、おまえってヤってるときゃわりと素直だし〜思考力も落ちるじゃねえか。もォイクぅって寸前なんか、ぼーっとしちゃってスキだらけだぜ?相手のスペック落として攻めるのはバトルの基本ってコトで!…テヘヘッなんてなーっ、や〜っぱオレがヤりたかっただけカナ〜っ!」

……こ………コイツ……

「けど、そりゃ大丈夫だよ」
「きさまの話は、根拠がない」
「ンなコトねえだろー?オレ、よくわかるぜ?アイツのキモチ」
「気持ち?」
「なんたって、オレたちライバルだからな〜…ま、オレのほーが断然、負けねえけど!」
「ライバル?おまえと…誰が?」
「前、ロシアでオレたち、一時、休戦てことにして同盟結んだんだよ。おまえを取り返すために、共同戦線!だから、おまえに勝てたろ?」
「………」

いったい……何の話だ……。
どうもコイツの話は、ときどき、よくわからないから…困る。

「絶対ぇ朱雀は来るよ。それは大丈夫だって」
「………」
「オレはこの間ドラグーン拾って、やっぱそうかーって確信したけど。アイツらも好みのタイプが、あんだよ。戦うキモチだけじゃねえよ。好きでも来るんだよ」

ただ…好きでも…来る?
じゃあ、敵愾心がなくとも…オレは……この先も…BBAで、おまえとやってけるだろうか?

また、タカオがジロジロとオレを眺め回した。
「おまえ〜なんっか、また見当ハズシたこと考えてんじゃねえのかなー」
「………」
「カイ、おまえってアタマ良いけど…ときどき、すっげー違った方向にぶっとぶだろ〜?…朱雀は来ると思うけどさ。おまえは、潔癖性の完全主義者だから、きっと、また変な無茶すんじゃねえのかって…オレは、そっちのが、ずーっと心配だぜ」
「………きさまに、そこまで言われたくない」

…と。

「あのさ、オレ…」

すぐに言い返してくると思ったのに。
オレンジ色の大きな瞳が、ふと、くすんだみたいに暗くなって、少しだけ言いにくそうに瞬いた。

「オレは…おまえに敵に回られるの…すげえ苦手だよ。辛ぇよ。そういうの、おまえにしてみたら、甘えんなって感じかもしんねえけど。こればっかりは…仕方ねえよ。だって、胸が苦しくて痛ぇもん」
「………」
「バトルは好きだけど。だから…オレん家の庭や近所の公園でも…仲間のままでも、ぜんぜん、いいんじゃねえのかって…それでもう全力出して、真剣勝負できるんだぜ?オレ…」
「……」

かもしれない。そういうものなのかもしれない。ほんとうは…
でもオレは…

「ま、いいけどさ。あんまりムリすんなよ、カイ?」
タカオが笑って…またオレンジ色が明るくなった。

「そんで?だから体のこと?ドランザー回せねえから…BBAにも行きたくねえのかよ?」
「……」

それは、そうだが……事実は、やや違う。
BBAに足が向かないのは…
コイツが…どんな表情で他のブレーダーを眺めるのか、それを見るのが…怖いからだ。
もし、おまえが悲しい顔をしたら……オレのほうが…耐えられない…。

すっかりそんなザマになってしまって…だからオレには…もう…あの力を引き出す術も…思い付かなくて…
もう前のようには、いかないと、わかってるのに、
この先、どうすればいいのか…よくわからない。

なに考えてんだよカイ〜?なんかオレには、よくわかんねえけどさ。いーいじゃねえか。だっておまえは…もともと…うんと優しいだろ?
「な…?」
きょとんとオレを見つめた瞳が、ニコッと笑った。
「…あんまりオレを見くびるなって。オレはおまえが大事だから…何年だって…一生だって待てるんだし。朱雀だって、おまえに懐いてるから絶対ぇ来るよ。…だいじょーぶだよ。腕だって足だって…今に、ちゃんと動くようになるから。焦らなくたって、もう好きなだけ時間かけていーんだぜ?それまでは、オレが上げといてやるし」
「アッ、あッ…タカ…オ!!」

どこ上げてんだ!?きさま…!!まさか…ホントに朝までやるつもりか!?

「あ……はっ…」
なんで…また
「ア……きさま…いったい…」
タカオが中に…挿入ってるんだ…???

ベッドの上に仰向けに寝たコイツの…腹の上に乗せられて…
中途半端に突き上げられながら、裏筋だけを、丁寧に撫でられて…
「んんッ…あッ…アッ…」
また…気が…変に…

「もーおまえさ、考えすぎの、禁止事項、多すぎ。あれダメ、これダメって。イイコトは、みんな除外しちまって。もっとスナオにキモチイイコトだけやって。ヤなことは、わざわざする必要ねえんだから。全部やめて、何も考えんなよ」
「きさまじゃ、あるまいしっ」
「も〜マジメだな〜おまえは〜。ストイックすぎ。ツレェことなんか、わざわざしなくても…もっと楽な生き方って…いっぱいあるんだぜ?この世には…」

「……」
「気持ちイイコト…いっぱいあるのに。おまえは…もっと楽しいことだけ、やっていいと思うぜ…オレ…」

勝手なことを。オレだって……
本当は、冷たい場所は嫌いなのに。そこに絶対、居なければならないと…いつの頃からか…強迫観念ができてしまったんだ。

「もーダメ!絶対ぇ今年は海、行こうぜ。それから、お祭りも!!」

また…勝手な予定を宣言して…
…指が…
今度はオレの…精嚢なんか揉んでくるから
「…ひ…ッ…は…」
また…自分の先端から滲んでくるのがわかってしまって…動揺のあまり耳まで火照っ…
「あーあ。カラダはこんなにスナオなのになー」
「きさまがっやりたいだけだろうが!!」
「うん。オレは、キモチイイこと、やりてえしー。ツレェのヤだし。楽しーことだけ、してえから、いつもそうしてるぜ?」
「………」

この…カラダ重視の、享楽主義者が!!
まったく、きさまは、いかにも長生きしそうなヤツだ。

「だから、おまえも〜少しは、カラダに正直に生きたほーが〜」
「あっ、あっ…」
臀を持った両手に、躯を揺すり上げられて…

「まだヤる気か!?きさま!!」
「ん〜だってもうハマっちまってるし」
「きさまがやったんだろうが!」
「だって、おまえ、オレに心配ばっかりかけて。オレはいつも、ガマンばっかり〜。だから、もーオレ、家帰ったら、いーっぱいやりたかったんだよー」
「そんなことに、いちいちグチをこぼすな!だいたい、きさまのガマンて…どの程度をいうんだっ!?」

このバカときたら………なんて恥ずかしいことに…病院のトイレで…何回か…
『だぁいじょうぶだって、挿れねえから!手伝うだけー!』とか抜かして……オレを…洋式の白い陶器に座らせて…さんざん嬲って達かせた後、『なーっ今度はオレにも、オレにも〜』などと騒ぎ出し…
…結局、…お互いに手で…という…ことに……

とんでもないヤツだと、その時、思った。

「そおかなァ?……けど。おまえ、キモチイイって顔してたぜ?…ホラ、今も…」
「……ァ…アッ…あうッ…」

「なーなー。今度はーカイが自分で動いてみてくれよ〜」
「なっ…」
「だってズリィじゃねえか。オレばっか頑張っててさ〜。カイも、ほら、ちゃんと、腰、使って」
「ひッ…」
オレのものを軽く握りながら、突き上げてくるから…仕方なく…合わせて動かしてみたら…
「アッ、ア、ひァ…」
三倍増しで…コイツを…感じて…
大変な…ことに…

「あ…タカ…オ…ッ!!」
「うわぁ…イイよッ…カイッ…」

……かっ…勘弁してくれ…もう…

気持ちイイのは良いとして…
…あんまり好すぎて…なんだか…泣きたくなってきた…

「あぁッ、アァッ…」

コイツの躯に…頭の芯まで溶かされて…
むやみに声と涎が唇の端から伝い落ちて、
半分以上…意識が飛んだ、よくわからない状態で…射精させられたら…
さすがにもう…不安なんてどうでもいいほど…
カラダが溺れてしまった。

「はぁッ…はっ…はぁ…ぁッ…」

いいか…もう…
タカオが中に居て…コイツの上で躯が揺れて…なんだかひどく気持ち好いから……


本当は……あんまり幸せすぎて…
たぶん…
オレの中に眠ってた古い古い壊れた過去が、目覚めて、そこに、かぶってしまったんだ…。

すっかり…忘れたことに、してあったのに。

オレが…戦うことにこだわるのも、明るいことに興味ないのも、生まれつきなんかじゃなかった。
最初から…こうだったわけじゃないのに。

あの男が…
親父が…オレを置き去りにしていってから…色んなことが、変わった気がする。
あれから、オレは…
寒い場所に居るのが…すっかり、あたりまえになってしまって。

まるで壊れた条件反射みたいに
暖かい居場所ばかり、拒絶して。

そんなふうに破損してきた自分の心を…自分で修復するために…

祖父なんかの言いなりになってみたり。
強くなることだけに、こだわって…

もっと…色んなものを…壊してしまった…。

「カイ」

不意に…目隠しでもするみたいに。甘ったるい声が、見上げてきた。
「いいから、もう何も考えんな」
「……は…ッ…ぁ…」
「気持ちイイコトだけ、感じてろよ」
「あ、はッ…ア…」
「それで、いいだろ?オレ…」

まるで、そのためだけみたいに。
タカオの躯が深く突き上げてきた。

「アッ……あァッ…」
「…ぜってー何があっても、おまえのこと…離さねえからな」

視界がますます霞んできて、ドラッグみたいに…快楽が蝕んでくる。

ふと…コイツも本当は不安なんだと…
そのとき
タカオの熱いものと一緒に…感じた気がしたが。

自分の喘ぎにまぎれて…よく聞こえない。

庭も、視界も、闇に沈んで。
もう、なにも見えない。

それでも
まだ…どこからか…花びらの匂いが漂ってくる…気がした。



■to be continued■